個人間の売買契約書の書き方|メルカリ・車・楽器の個人取引で使える無料テンプレート
「友人から中古の車を50万円で譲ってもらうことになった」「コレクター仲間にビンテージギターを直接売りたい」――そんな話がまとまったとき、意外と手が止まるのが「これって、書面にしたほうがいいのかな?」という迷いです。
数万円までなら口約束でも何とかなりますが、車や楽器、アンティーク、パソコンなど10万円を超える個人間取引では、「聞いていた状態と違う」「支払いが遅れている」といったトラブルが起きたときに、口約束だけでは白黒がつけられません。
この記事では、個人間で売買契約書を交わすときの基本、売主・買主それぞれが押さえたいポイント、2020年の民法改正で変わった「契約不適合責任」、印紙税やクーリングオフの扱いまでを、やさしく順を追って解説します。
売買契約書とは?口約束との違い
売買契約書とは、売主が「この物を、この値段で売ります」、買主が「その値段で買います」という合意を、書面にして残したものです。民法555条では、売買契約は「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する」ことで成立すると定められています。
つまり法律上は、書面がなくても口頭の合意だけで売買契約は成立します。フリマアプリのやりとりも、コンビニでの買い物も、法的にはすべて売買契約です。
それでもわざわざ書面にする理由は、「言った・言わない」を防ぐためです。売値、引渡しの時期や場所、壊れていたときの責任、支払い方法――これらを口約束のままにすると、あとで解釈が食い違ったときに双方の記憶だけが証拠になってしまいます。書面に残せば、そこに書かれたことは動かせない事実として、話し合いの土台にできます。
目安としては、次のようなケースでは書面にしておくと安心です。
- 金額が10万円を超える(車、バイク、楽器、時計、カメラ、パソコンなど)
- 引渡しと支払いのタイミングがずれる(後払い、分割払い、取り置きなど)
- 相手と直接会ったことがない(SNSやマッチングサイトで知り合った)
- 中古品で状態にばらつきがある(アンティーク、ジャンク品、動作未確認品)
- 名義変更や登録手続きが必要(自動車、バイク、船舶など)
売買契約書に必ず入れたい8つの項目
売買契約書に決まった様式はありませんが、次の8項目を押さえておくと安心です。
1. タイトル
「売買契約書」または「物品売買契約書」と冒頭に書きます。車の場合は「自動車売買契約書」など、対象を明示するとより分かりやすくなります。
2. 当事者(売主・買主の氏名と住所)
売主・買主の双方について、氏名・住所を書きます。フルネームで、住所は郵便物が届く形で書きましょう。屋号やハンドルネームだけでは、あとで本人特定が困難になります。
3. 目的物の特定
売買の対象を、後から誰が見ても特定できるように書きます。車なら車名・型式・年式・車台番号、楽器やカメラ・パソコンならメーカー・モデル名・シリアルナンバーまで書いておくと、すり替えなどのトラブルも防げます。「フェンダーのギター」だけでは特定不足です。
4. 売買代金と支払方法
金額は「金五十万円也(¥500,000-)」のように漢数字と算用数字を併記するのが安全です。支払方法は「令和◯年◯月◯日までに、売主指定の銀行口座へ振り込む(振込手数料は買主負担)」など、期日・方法・手数料負担まで具体的に書きます。
5. 引渡しの時期と場所
「令和◯年◯月◯日に、売主自宅にて現物を引き渡す」「配送業者の◯◯便で発送し、送料は買主負担とする」など、いつ・どこで・誰の費用で引き渡すかを明記します。支払いと引渡しの順序も重要です(後述)。
6. 現状の告知と契約不適合責任
中古品は「現状渡し」か「動作保証あり」かで、あとの責任範囲が大きく変わります。既に分かっている傷・へこみ・不具合は具体的に書き出し、双方が了承した状態として文書に残しておきます。詳しくは次章で解説します。
7. 所有権の移転時期
「代金の支払い完了をもって、所有権は買主に移転する」とするのが一般的です。先に物を渡してしまうと、支払いが滞ったときに返してもらうのが難しくなります。
8. 双方の署名・押印
作成日・売主/買主それぞれの住所・氏名を書き、押印します。認印でも法的効力はありますが、署名部分は自筆にしておきましょう。契約書は2通作成し、それぞれが1通ずつ保管するのが基本です。
2020年の民法改正で変わった「契約不適合責任」
個人売買でとくに知っておきたいのが、この「契約不適合責任」です。2020年4月に施行された改正民法により、それまでの「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という考え方が「契約不適合責任」に変わりました(2026年7月時点)。
改正前は「売主が気づいていなかった隠れた欠陥(瑕疵)」だけが責任の対象でしたが、改正後は契約の内容に適合しないもの全般が対象になりました。「契約書に書かれていた状態と違う」と買主が主張できる範囲が広がった、と考えるとイメージしやすいです。
契約不適合があったとき、買主は次の4つを請求できます(民法562条〜564条)。
| 権利 | 内容 |
|---|---|
| 追完請求 | 修理や代替品の引渡しを求める |
| 代金減額請求 | 不具合の分、代金を減らすよう求める |
| 損害賠償請求 | 生じた損害の賠償を求める |
| 契約解除 | 契約自体をなかったことにする |
個人間の売買では、当事者の合意で契約不適合責任の範囲を調整できます。よく使われるのは次の書き方です。
- 現状有姿での引渡し:「本物件は現状有姿にて引き渡し、売主は契約不適合責任を負わない」
- 期間を区切る:「引渡しから◯日以内に発見された不具合についてのみ、売主は責任を負う」
- 既知の不具合を列挙:「ただし、別紙記載の状態は買主が了承のうえ引き受けるものとする」
売主は責任を限定しておかないと、引渡し後もいつまでも修理や返金を求められかねません。買主は、あまりに広く免責されると「壊れていても文句が言えない」ことになるので、既知の不具合の範囲を文書で明確にしておくことが大切です。
支払いと引渡しは「同時履行」が基本
トラブルが一番起きやすいのが、支払いと引渡しの順番です。民法533条では「同時履行の抗弁権」が定められており、代金と物の引渡しは同時に行うのが原則です。遠隔地のやりとりや高額商品ではそのまま同時にとはいかないので、次のような方法がよく使われます。
| 方法 | 向いているケース |
|---|---|
| 手渡し(対面同時) | 近距離・現金取引 |
| 先払い後発送 | 買主が売主を信頼できる場合 |
| 代金引換(代引き) | 双方に安心。手数料が発生 |
| エスクロー・仲介 | 高額品や初対面の取引 |
契約書には「◯月◯日までに買主が売主指定口座に代金を振り込み、入金確認後3営業日以内に売主が発送する」など、順番と期日を明記しておくと行き違いを減らせます。車のように名義変更手続きが必要な場合は、必要書類(譲渡証明書・印鑑証明・自賠責保険証・車検証など)の受け渡しタイミングも書いておくと安全です。
印紙税はどうなる?(動産の売買は基本的に不要)
借用書と違い、車・楽器・パソコン・家具といった動産の売買契約書には、基本的に収入印紙は不要です(2026年7月時点)。
印紙税法上、課税対象になる第1号文書は「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機、または営業の譲渡に関する契約書」で、一般の動産は含まれていません。国税庁の解説でも、動産の売買契約書は原則として課税文書ではないとされています。
例外的に印紙が必要になるのは、継続的取引の基本契約書(第7号文書、4,000円)に該当する場合、修理や取付工事など請負契約の要素が含まれる場合などです。個人間で「一回きりの車の売買」「一台きりの楽器の売買」であれば、印紙は不要と考えて問題ないケースがほとんどです。
個人間売買にクーリングオフは使えない
「買ったあとに気が変わったから、クーリングオフしたい」――これは個人間売買では使えません。クーリングオフは特定商取引法などで認められた制度で、対象になるのは事業者と消費者の間の一定の取引(訪問販売・電話勧誘など)だからです。個人同士の売買はそもそも法律の対象外です(2026年7月時点)。
いったん契約が成立して代金を払ったら、原則として一方的な理由での解約はできません。だからこそ、契約書を交わす前に状態や条件を十分確認しておくことが大切です。どうしても解約したいときは、売主に事情を話して合意解約を目指すか、契約不適合など明確な理由があるときにその主張をしていくことになります。
【実例】友人から中古車を60万円で買うケース
もっとも相談が多いのがこのパターンです。押さえておきたいポイントを整理します。
- 目的物の特定:車名・型式・年式・車台番号・登録番号・走行距離を明記
- 現状の告知:既知の傷、修復歴、機関系の不具合を書き出し、写真を別紙に添付
- 契約不適合責任:「引渡しから14日以内に発見された不具合のうち、走行に支障のあるものに限り売主が対応する」など範囲を限定
- 必要書類の授受:譲渡証明書、印鑑証明書、委任状、自賠責保険証、車検証、リサイクル券
- 名義変更の期限:「買主は引渡し後14日以内に自己の名義に変更する」
名義変更が完了するまでは自動車税の請求書が売主に届く可能性もあります。「いつ、どこで名義変更するのか」まで書面で決めておくと、あとの行き違いを防げます。
よくある質問(FAQ)
Q. 契約書は2通作らないとダメ?
2通作成して売主・買主が1通ずつ保管するのが基本です。原本作成が難しい場合は、双方の署名済みの写真やPDFを両者で共有しておきましょう。
Q. 印鑑はシャチハタでもいい?
避けたほうが無難です。認印か、金額が大きい場合は実印を使いましょう。シャチハタは同じ印面が大量生産されているため、契約書用の押印としては不向きとされています。
Q. LINEやメールのやりとりだけでも契約は成立する?
成立します。ただし削除や見落としのリスクがあるので、金額の大きな取引では合意内容を1枚の書面にまとめておくほうが安心です。
Q. 支払いを分割にしてもいい?
問題ありません。「毎月◯日に◯円ずつ、全◯回で支払う」「1回でも遅れた場合は残額を一括請求できる」といった条件を書いておきましょう。所有権は完済時に移転するとしておくと売主の保護になります。
Q. 現状渡しなら、あとから何を言われても大丈夫?
「現状有姿にて引き渡し、契約不適合責任は負わない」と書いていても、売主が知っていた不具合を意図的に隠していた場合は免責が認められないことがあります(民法572条)。既知の不具合を書き出しておくことが、結局は売主自身を守ります。
Q. どうしても不安なときは?
金額が非常に大きい、名義や登録が複雑といった場合は、行政書士や弁護士に契約書の内容をチェックしてもらうと安心です。地域の法テラスでは無料相談も受け付けています。
まとめ:売買契約書は「取引の記憶」を残す道具
個人間の売買契約書は、法律で義務づけられているものではありません。それでも、10万円を超えるような取引では、書面にしておくメリットは大きいものです。
- 目的物・代金・引渡し・支払方法をきちんと特定する
- 現状の状態と、契約不適合責任の範囲をはっきりさせる
- 支払いと引渡しの順序・期日を明記する
- 動産の売買なら印紙は基本的に不要
- クーリングオフは使えないので、契約前の確認が命
このあたりを押さえておけば、個人間取引でも「あとから揉める」リスクをぐっと下げられます。契約書は、相手を疑うために書くのではなく、お互いに気持ちよく取引を終えるためのやさしい記録として使うものです。
記事の参考にした情報源
この記事は、以下の公式情報源を確認して執筆しています(2026年7月時点)。 制度・税制は改正されることがあるので、実際に書類を作る前に、 下記のリンク先で最新情報をご確認ください。
[売買契約の根拠条文] e-Gov 法令検索「民法」(第555条以降・売買)
[売買契約書の印紙税] 国税庁「不動産売買契約書等の印紙税」
[個人間売買はクーリングオフ対象外である旨] 消費者庁「特定商取引法とは」
民間実務の相場・慣行に関する部分は、複数の実務記事・専門家サイトを参照しつつ、当サービスで加筆修正しています。
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話し言葉で売買契約書を作ってみる → /baibai
まずは1枚、作ってみることから始めてみましょう。