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譲渡合意書・売買契約書・贈与契約書の違い|物や権利を「渡す」ときの3つの選択肢

「知人にカメラを譲ることになったけれど、これって売買契約書? それとも譲渡合意書? お金をもらわないなら贈与契約書?」――個人間で何かをやり取りするときに、いざ紙に残そうとすると、名前の似た書類がいくつも出てきて手が止まってしまうことがあります。

「譲渡合意書」「売買契約書」「贈与契約書」。どれも「物や権利を相手に渡す」ための書類ですが、対価があるかどうか、何を渡すか、そして税務上の扱いが微妙に違います。この記事では、法律にくわしくない方に向けて、3つの書類の違いと、どんなときにどれを選べばいいのかを整理します。


結論を3行で

  • お金(対価)と引き換えに物や権利を渡すなら「売買契約書」。中古品の個人間売買や、株式・自動車の売却などで使います。
  • 無償で物や権利をあげるなら「贈与契約書」。年間110万円を超えると受け取った側に贈与税がかかる点に注意が必要です。
  • 売買にも贈与にも当てはめにくい、権利の移転そのものを合意したいときに「譲渡合意書」。債権譲渡や事業譲渡など、対価の有無より「誰から誰へ権利を移すか」を主眼にする場面で使います。

主な違いを表で

まず、3つの書類の違いを一覧で見てみましょう。

項目 譲渡合意書 売買契約書 贈与契約書
対価 あり/なし どちらもあり得る 必ずあり(代金) 必ずなし(無償)
根拠となる主な条文 民法466条ほか(債権譲渡等) 民法555条(売買) 民法549条(贈与)
典型的な対象 債権、契約上の地位、事業、権利 中古品、自動車、不動産、株式など「物・財産権」 現金、不動産、動産などの無償の受け渡し
税務上の主なポイント 対価の有無で売買・贈与に準じて判定 譲渡所得税(売主側)/消費税など 受け取った側に贈与税(年110万円超)
印紙税 対象文書に該当する場合のみ課税 不動産の場合は第1号文書に該当 原則不要(不動産の場合は例外あり)
作成の目的 権利の移転を明確化 代金と引き換えの取引を記録 「あげる」約束を書面で残す

「対価があるか・ないか」を軸に、対価あり=売買、対価なし=贈与、権利の移転そのもの=譲渡合意という三角関係で理解すると整理しやすくなります。


売買契約書の詳細|「代金と引き換えに財産権を移す」

売買契約書は、売主が財産権を移し、買主が代金を支払うことを合意する書類です。民法555条は「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めており、口約束でも成立する諾成契約です。ただし、後日のトラブルを防ぐために書面化するのが実務では一般的です。

強み

  • 対価が明確:いくらで何を渡したのかがはっきり残るので、後から「贈与だった」「もっと高く売ったはずだ」といった誤解が起きにくい
  • 税務上も整理しやすい:売主に譲渡所得が発生した場合の申告資料として、また買主の取得価額の証拠として使える
  • 返品・保証などの条件を書き込みやすい:契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)や引渡時期など、実務的な条項を盛り込める

弱み

  • 不動産の売買契約書は印紙税がかかる:印紙税法上の第1号文書に該当します(2026年7月時点、令和9年3月31日までの契約書には軽減措置あり)
  • 代金の額が相場から著しく離れると税務上の問題が生じることがある:たとえば時価500万円のものを親族に10万円で「売った」ようなケースは、差額が「みなし贈与」として贈与税の対象になる可能性があります

使いどころ

  • 中古カメラ・パソコン・楽器などを個人間で売買する
  • 中古車を個人間で売買する
  • 未上場株式や事業用の在庫・機械を売却する
  • 不動産(土地・建物)の売買

贈与契約書の詳細|「無償であげる」約束を書面で残す

贈与契約書は、贈与者が「無償で財産を与える」意思を示し、受贈者が「もらいます」と受諾することで成立する契約を書面にしたものです。民法549条により、贈与は当事者の合意だけで成立する諾成契約とされています。

強み

  • 「あげたつもり/もらったつもり」の食い違いを防げる:口約束の贈与は履行前ならいつでも取り消せますが(民法550条)、書面による贈与は原則として撤回できないため、渡す側・受ける側の双方にとって安心です
  • 相続や税務調査への備えになる:親子間で「これは贈与だった」と後で説明するときに、日付入りの契約書があると証拠力が高い
  • 印紙税は原則不要:現金や動産の贈与契約書には印紙税がかかりません(不動産の贈与契約書は例外的に印紙が必要になるケースがあります)

弱み

  • 年110万円を超えると受贈者に贈与税がかかる:暦年課税では、1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計から基礎控除110万円を差し引いた残額に贈与税が課税されます(2026年7月時点)
  • 無償のつもりが「みなし贈与」でトラブルになることも:親子間の低額売買や、借入金の返済免除などが、実質的に贈与とみなされる場合があります

使いどころ

  • 親から子へ現金や不動産をあげる
  • 祖父母から孫へ入学祝いや住宅資金をまとまった形で渡す
  • 夫婦間で財産の一部を配偶者に移す
  • 「対価を取らずに、はっきりと譲る」ことを記録に残したいケース全般

譲渡合意書の詳細|「権利の移転」を主眼にする書類

譲渡合意書は、ある権利や地位を、譲渡人(現在の持ち主)から譲受人(新しい持ち主)へ移すことを合意する書面です。売買契約書や贈与契約書と違って、「対価があるかどうか」よりも「誰から誰に何が移るのか」を明確にする点に重心があります。

典型的な場面

  • 債権譲渡:たとえばA社がB社に対して持っている売掛金を、C社に譲る場合。民法466条1項は「債権は、譲り渡すことができる」と定めており、原則として自由に譲渡できます(性質上譲渡を許さないものは除く)。2020年施行の改正民法では、譲渡制限特約付きの債権であっても譲渡自体は有効とされました
  • 契約上の地位の譲渡:賃貸借契約の借主側の地位、フランチャイズ契約の加盟店の地位などを、第三者に移す場合
  • 事業譲渡:個人事業や小規模ビジネスを、屋号・顧客・設備ごと他の人に引き継ぐ場合
  • 著作権・商標権など知的財産権の譲渡

強み

  • 対価の有無を柔軟に設計できる:「対価あり(実質的に売買)」でも「対価なし(実質的に贈与)」でも、書面のタイトルとして「譲渡合意書」を使うことができます
  • 物の売買では表現しにくい対象にフィットする:債権や契約上の地位、無形の権利など、「モノ」ではなく「権利」を渡すときに自然な書き方ができます
  • 第三者への通知や承諾が必要なケースを整理できる:債権譲渡は債務者への通知または承諾が対抗要件となるため、その手続きの取り決めも譲渡合意書のなかで明記できます

弱み

  • 書面のタイトルだけで税務上の扱いが決まるわけではない:譲渡合意書と書いてあっても、対価があれば売買として、無償なら贈与として、それぞれの税務ルールが適用されます
  • 対象が抽象的になりやすい:何を譲渡するのか(債権の特定、事業の範囲など)を丁寧に書かないと、後で「どこまでが譲渡の対象か」で揉めやすい

使いどころ

  • 売掛金・貸付金などの債権を第三者に譲る
  • 個人事業の屋号・顧客リスト・在庫を他の人に引き継ぐ
  • 著作権・商標権を他者に移転する
  • 契約上の地位(借主・加盟店など)を第三者に交代させる

こう選ぶ|if 〜 then 〜 の判断チャート

迷ったときは、次の順番で当てはめてみてください。上から順にチェックしていって、最初に「はい」になった項目で判断すれば大きくは外しません。

  • もし、渡すのが「債権・契約上の地位・事業・知的財産権」なら → 譲渡合意書
  • もし、物や財産をお金と引き換えに渡すなら → 売買契約書
  • もし、物や財産を無償であげるなら → 贈与契約書
  • もし、渡す相手が親族で、対価をもらわず、年110万円を超える金額になりそうなら → 贈与契約書(贈与税の申告も検討)
  • もし、実質は売買だが、対象が「モノ」というより「権利」で、譲渡合意書の名前がしっくりくるなら → 譲渡合意書(内容は売買契約書と同等の条項で)
  • もし、対価も対象も曖昧で、まず合意だけを残したいなら → 譲渡合意書に「対価の詳細は別途定める」と入れて仮締結

もう少しざっくり言えば、「渡すもの」が物か権利か、そして「お金が動くかどうか」の2軸で選ぶのが基本です。


税金と印紙税|3つの書類で扱いはこう変わる

書類の性格が違えば、税金の扱いも変わります。ここは特に間違えやすいポイントなので、丁寧に整理します。

贈与税(受け取った側にかかる)

暦年課税では、1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計から基礎控除110万円を差し引き、残額に贈与税がかかります(2026年7月時点、国税庁)。 親子間の低額売買や、実質無償の譲渡合意も、税務上は「みなし贈与」として贈与税の対象になり得ます。

譲渡所得税(渡した側にかかる)

不動産・株式などを売却して利益(譲渡益)が出た場合、売主側に譲渡所得税がかかります。売買契約書や、対価のある譲渡合意書がその根拠資料になります。

印紙税

  • 売買契約書:不動産の売買契約書は印紙税法上の第1号文書に該当し、契約金額に応じた印紙が必要です。平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書には、軽減措置が適用されます(2026年7月時点、国税庁)。動産の売買契約書(一般的な中古品売買など)は、原則として印紙税の対象外です
  • 贈与契約書:原則として印紙税はかかりません。ただし、不動産の贈与契約書のうち金額の記載があるものなど、例外的に第1号文書に該当するケースがあります
  • 譲渡合意書:中身が第1号文書(不動産譲渡・消費貸借など)や第7号文書(継続的取引の基本契約書)等に該当すれば、その分の印紙が必要です

不動産譲渡契約書の印紙税額(軽減措置後・2026年7月時点)

契約金額 軽減後の印紙税額
10万円以下 200円(軽減対象外)
10万円超 50万円以下 200円
50万円超 100万円以下 500円
100万円超 500万円以下 1,000円
500万円超 1,000万円以下 5,000円
1,000万円超 5,000万円以下 10,000円
5,000万円超 1億円以下 30,000円

よくある誤解

誤解1:「お金をもらわなければ、税金はかからない」

無償でも受け取った側に贈与税がかかることがあります。年間110万円までは基礎控除の範囲内で税金はかかりませんが、これを超えると受贈者に贈与税の申告義務が生じます。「無償だから安心」ではなく、金額と関係性を確認することが大切です。

誤解2:「タイトルを『譲渡合意書』にすれば、売買にも贈与にもならない」

これは大きな誤解です。書面のタイトルは税務上の扱いに直接影響しません。中身が対価を伴えば売買、無償なら贈与として、それぞれの税務ルールが適用されます。譲渡合意書という名前は、あくまで「権利の移転を主眼にした書き方」という意味合いにすぎません。

誤解3:「贈与契約書は、口約束と同じで撤回できる」

書面によらない贈与は履行前ならいつでも撤回できますが(民法550条)、書面で作成した贈与契約は、履行前でも原則として撤回できません。書面化することは、贈与者・受贈者双方にとって「後戻りしにくくする」効果があります。

誤解4:「著しく安い金額で売買契約書を作れば、贈与税は避けられる」

これは避けられません。時価から著しく離れた低額での売買は、差額が「みなし贈与」として贈与税の対象になる可能性があります(相続税法7条)。親族間の高額な財産移転を検討する場合は、税理士に相談するのが安全です。


よくある質問(FAQ)

Q. 中古のカメラを友人に売るとき、どの書類がいい?

代金をもらうなら売買契約書が自然です。金額が数万円程度で、双方が信頼関係にあるなら、簡単な物品売買の書式で十分です。

Q. 親から100万円もらうときは、贈与契約書が必要?

法的には口約束でも成立しますが、後々の相続や税務調査を考えると、贈与契約書を作っておくと安心です。年間110万円までは基礎控除の範囲内で贈与税はかかりませんが(2026年7月時点)、他にも贈与を受けている場合は合算して判定します。

Q. 個人事業を後輩に引き継ぐときは、どの書類?

事業(屋号・顧客・在庫・設備など)をまとめて渡すなら、**譲渡合意書(事業譲渡契約書)**が一般的です。対価がある場合は売買の性格を帯び、無償なら贈与の性格を帯びますが、契約書のタイトルは「事業譲渡契約書」「譲渡合意書」とするのが実務上わかりやすい選び方です。

Q. 売掛金を他社に譲るときは?

**債権譲渡契約書(譲渡合意書)**を作成します。あわせて、債務者(お金を払う側の会社)への通知または承諾を得ることが、第三者への対抗要件として重要です(民法467条)。

Q. 「譲渡証明書」と「譲渡合意書」は違うの?

似ていますが、役割が違います。「譲渡証明書」は自動車の名義変更などですでに譲渡が行われたことを一方的に証明する書面、「譲渡合意書」は譲渡についての合意そのものを記録する双方署名の契約書、という位置づけです。自動車の個人間譲渡では、両方を組み合わせて使うことがあります。

Q. 迷ったときは、どこに相談すればいい?

金額が大きい、不動産や株式が絡む、税務上の判断が微妙、といったケースでは、税理士や司法書士、弁護士に相談すると安心です。特に高額な親族間の財産移転は、贈与税・譲渡所得税の両面から検討する必要があります。


まとめ:「何を」「対価あり/なしで」渡すのかで選ぶ

3つの書類は「対立するもの」ではなく、渡し方の違いに応じた3つの選択肢です。

  • 売買契約書 = 対価と引き換えに、物や財産権を渡す
  • 贈与契約書 = 対価なしで、財産を無償で渡す
  • 譲渡合意書 = 権利の移転そのものを合意する(対価は柔軟)

「渡すもの」と「お金の動き」を整理して、書類の名前ではなく実態に合わせて選ぶ――そんな視点で選べば、後から税務や法的な扱いでつまずくことが少なくなります。


記事の参考にした情報源

この記事は、以下の公式情報源を確認して執筆しています(2026年7月時点)。 制度・税制は改正されることがあるので、実際に書類を作る前に、 下記のリンク先で最新情報をご確認ください。


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