書類メーカー

退職届と退職願の違い|撤回できる?できない?円満退職のための正しい選び方

「そろそろ辞めようと決めた。でも、出すのは"退職届"だっけ、"退職願"だっけ?」――いざ書こうとすると、この2つの違いで手が止まってしまう方はとても多いです。ネットで調べても「退職届のほうが強い」「退職願はお願いする形」など、なんとなくのイメージは出てくるけれど、では実際に自分はどちらを出すべきなのか、判断がつきにくい。

実はこの2つ、名前がよく似ていますが、法律の世界ではまったく別の意味を持つ書類です。ひとことで言えば、退職届は「辞めます」という一方的な通知、退職願は「辞めさせてください」というお願い。この違いを知らないまま提出してしまうと、「撤回したいのにできない」「会社に引き止められて話が進まない」といった思わぬトラブルにつながることがあります。

この記事では、法律にくわしくない方に向けて、退職届と退職願の違いを、民法や労働法の枠組みからやさしく整理します。読み終わるころには、自分の状況にはどちらがふさわしいのか、迷わず選べるようになっているはずです。


結論を3行で

  • 退職届は「辞めます」という一方的な意思表示。原則として、提出後は撤回できません。
  • 退職願は「辞めさせてください」というお願い。会社が承諾する前なら撤回できます。
  • 円満に辞めたいならまず退職願、確実に辞めたいなら退職届――これが基本の使い分けです。

主な違いを表で見る

一気に比べると、性格の違いがはっきり見えてきます(2026年7月時点)。

項目 退職届 退職願
法的な性格 一方的な意思表示(辞職) 合意退職の申し込み
会社の承諾 不要 必要
撤回 原則できない 承諾前ならできる
効力が発生する時点 提出から2週間後(民法627条) 会社が承諾した時点
会社は拒否できるか 原則できない できる(承諾しない自由がある)
向いている場面 引き止めが強い/確実に辞めたい 円満退職を目指す/話し合いで決めたい

同じ「退職」でも、退職届は労働者から一方的に契約を終わらせる強い書面、退職願は「合意で辞めるための相談書」というイメージです。


退職届とは:一方的に労働契約を終わらせる書面

退職届は、労働者が「この日をもって辞めます」と会社に一方的に通知する書面です。法律上は「辞職の意思表示」と呼ばれ、民法627条で認められた労働者の権利にあたります(2026年7月時点)。

民法627条第1項では、期間の定めのない雇用契約について、当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間経過すれば契約が終了すると定めています。つまり、正社員のように契約期間の定めがない働き方をしている場合、退職届を出してから2週間経てば、会社の承諾がなくても法律上は退職が成立するということです。

強みと弱み

  • 強み:会社の承諾がいらないので、引き止められても2週間で退職できる。「辞めたいのに辞めさせてもらえない」という状況を法律の力で打開できます。
  • 弱み:一方的な通知なので、原則として提出後は撤回できません。「やっぱり残りたい」と思っても、会社が同意してくれない限り、退職の効力は止められません。

使いどころ

退職届が向いているのは、次のような場面です。

  • 何度も退職を申し出ているのに、上司が受け取ってくれない
  • 就業規則の「1カ月前まで」等のルールにとらわれず、法律上のルールで確実に辞めたい
  • すでに転職先が決まっていて、退職日を絶対に動かせない

厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも、確実に退職したい場合は退職の意思を明確に記載した退職届を提出して任意退職の申入れを行うことが無難と案内されています(2026年7月時点)。


退職願とは:会社と「合意」で辞めるための申し込み

一方の退職願は、会社に対して「◯月◯日をもって退職させていただきたい」とお願いする書面です。法律的には合意解約の申し込みにあたります。つまり、労働者と会社の合意で契約を終わらせるための「話のスタート地点」です。

労働契約は、労働者と会社の合意で結ばれた契約なので、双方の合意で終わらせるのが本来の姿です。退職願は、その合意退職を目指す申し込みという位置づけになります。

強みと弱み

  • 強み:「お願いする」形なので角が立たず、上司や会社との関係を保ちやすい。会社の承諾を得るまでの間は、気が変わった場合に撤回することもできます
  • 弱み:会社が承諾しない限り、退職の効力は発生しません。「話し合いましょう」と保留にされたり、条件面で押し戻される可能性があります。

使いどころ

退職願が向いているのは、次のような場面です。

  • お世話になった会社なので、なるべく穏やかに話をつけたい
  • 退職日や引き継ぎ期間を会社と相談して決めたい
  • 転職先の入社日にまだ余裕があり、話し合いで柔軟に調整したい

撤回できる/できないの分かれ目

「一度出したら取り消せない」というイメージが強い退職書類ですが、実際には書類の種類と提出後の状況によって、撤回できるかどうかが変わります。ここが退職届と退職願のいちばん大きな違いです。

退職願は「承諾前」なら撤回できる

退職願は合意退職の「申し込み」なので、会社が承諾するまでの間は撤回できるのが原則です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも、辞職の意思表示について、使用者が正式な承諾を与える前であれば撤回が認められると整理されています(大隈鐵工所事件の考え方、2026年7月時点)。

ただし、会社側で人事の入れ替えや引き継ぎの段取りがすでに動き始めているなど、撤回すると会社に大きな損害を与える場合には、信義則に反するとして撤回が認められないこともあります。「気軽にいつでも取り消せる」というものではない点は押さえておきましょう。

退職届は原則として撤回できない

退職届は一方的な意思表示(辞職)なので、会社に届いた時点で法律上の効力が発生します。そのため、あとから「やっぱり撤回したい」と言っても、原則として会社が同意してくれない限り取り消せません

「退職届を出したその日のうちなら大丈夫」といったルールも法律上はありません。提出前に、本当にこの意思で確定していいのか、いま一度考えることが大切です。


会社は退職を拒否できる?

「上司が受け取ってくれない」「後任が見つかるまで辞めさせない、と言われた」――こうした相談はとても多いです。ここも退職届と退職願で扱いが変わります。

退職届は原則、拒否できない

期間の定めのない雇用契約であれば、労働者は民法627条によって「いつでも」退職を申し入れる権利を持っています。会社が「認めない」と言っても、申入れから2週間経てば退職の効力は発生します(2026年7月時点)。「後任が決まるまで」「損害賠償を請求する」などの引き止めは、原則として法律上の根拠がありません。

退職願は「合意」がなければ成立しない

退職願は合意退職の申し込みなので、会社が承諾しなければ退職は成立しません。「話し合いを続けましょう」と言われれば、そこで宙ぶらりんの状態になります。円満な着地を目指せる一方で、「辞めるタイミングは自分ではコントロールしきれない」という側面があるということです。

有期雇用(契約社員)の場合の注意

契約期間が決まっている働き方の場合、原則として期間の途中で自由に辞めることはできません。ただし、契約期間が1年を超える有期契約の労働者については、労働基準法附則第137条により、契約初日から1年経過した日以後は、使用者に申し出ることでいつでも退職できるとされています(一部の専門的知識を持つ労働者などを除く、2026年7月時点)。有期雇用の方は、自分の契約がどのタイプかを一度確認しておくと安心です。


こう選ぶ:判断チャート

自分はどちらを出すべきか、迷ったときの目安です。

  • 円満に辞めたい/上司との関係を保ちたい → まず退職願
  • すでに退職の意思が固く、確実に辞めたい退職届
  • 何度も申し出ているのに受理してもらえない退職届(内容証明郵便もあり)
  • 退職日を会社と相談して決めたい退職願
  • 引き継ぎ期間に余裕を持たせたい/話し合いで柔軟に対応したい退職願
  • 転職先の入社日が動かせず、退職日を絶対に確定したい退職届

実務では、まず退職願を出して話し合い、会社が承諾しない場合や強い引き止めにあった場合に退職届に切り替える、という段階的な進め方もよく行われています。


よくある誤解

誤解1:「退職届の方がフォーマルで正しい」

「届」という漢字の響きから、退職届のほうが正式な書類だと思われがちですが、そういうわけではありません。**退職届と退職願は"別種類の書類"**であって、どちらが正式かという関係ではないのです。円満退職を目指すなら退職願のほうが場に合っていることも多くあります。

誤解2:「退職願なら気が変わったらいつでも撤回できる」

たしかに退職願は承諾前なら撤回できるのが原則です。ただし、会社側ですでに後任の採用や引き継ぎ体制の変更が動き始めている場合、撤回によって会社に大きな不利益が生じるようなときは、信義則の観点から撤回が認められないこともあります。「言えばいつでも取り消せる」という感覚では臨まないほうが安心です。


よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則に「1カ月前まで」と書いてあります。従わないと違法?

就業規則で退職申入れの時期を定めている会社はよくありますが、民法627条は労働者を守るための規定なので、就業規則が民法よりも労働者に不利な内容(例:「6カ月前までに申し出ること」等)を定めても、その部分は労働者を強く拘束できないと考えられています(2026年7月時点)。ただし、実務上は円満退職のために、就業規則の期間を尊重して申し出るのが望ましいです。

Q. 退職届は口頭でも有効ですか?

法律上は口頭でも意思表示として成り立ちます。ただし「言った・言わない」のトラブルを避けるため、必ず書面で残しましょう。会社が受け取りを拒否する場合は、内容証明郵便で送るという方法もあります。

Q. 退職届と退職願、両方出す必要はありますか?

基本的にはどちらか一方でかまいません。まず退職願で相談し、話がまとまったところで正式に退職届を提出する、という二段階の運用をする会社もあります。会社の慣行に合わせて選びましょう。

Q. 「一身上の都合により」以外の理由は書くべき?

自己都合退職なら「一身上の都合により」で十分です。理由を細かく書く必要はありません。会社都合と自己都合ではその後の失業給付の扱いも変わるため、実際の事情と食い違う書き方にならないよう注意しましょう。

Q. 退職届を出したら有給休暇は使えますか?

退職日までの間に残っている有給休暇は、原則として取得できます。会社側は業務の都合で時季を変更できますが、退職までに時季変更する日がない場合は、変更権を行使できないと考えられています。退職届の提出とあわせて、有給消化の相談もしておくと安心です。

Q. パワハラや体調不良で急いで辞めたい場合は?

心身の健康を最優先にしてください。就業規則の期間にかかわらず、法律上は退職届の提出から2週間で退職できます。状況によっては即日退職の合意を求める、有給休暇と組み合わせて実質的に出社しない期間を作る、といった方法もあります。難しい状況では、労働基準監督署や、厚生労働省の「確かめよう労働条件」相談窓口、労働組合、弁護士など、専門の窓口に相談することも検討してみてください。


まとめ:名前は似ていても、意味はまったく違う

退職届と退職願は、名前こそ似ていますが、法律の世界では性格の異なる書類です。

  • 退職届:一方的な意思表示。会社の承諾なしに、2週間で退職が成立。原則、撤回不可。
  • 退職願:合意退職の申し込み。会社が承諾して初めて成立。承諾前なら撤回可能。

どちらが「正しい」ではなく、自分の状況に合うほうを選ぶことが大切です。まずは穏やかに話をしたいなら退職願、退職の意思が固く確実に辞めたいなら退職届。この基本さえ押さえておけば、いざというときに迷わず動けます。

退職はキャリアの節目です。次のステージに気持ちよく進むためにも、書類の意味を正しく理解し、自分の意思と状況に合った一枚を選んでいきましょう。


記事の参考にした情報源

この記事は、以下の公式情報源を確認して執筆しています(2026年7月時点)。 制度・法令は改正されることがあるので、実際に書類を作る前に、 下記のリンク先で最新情報をご確認ください。


話し言葉で書類を作ってみる

書類の意味は分かった。でも、いざ書こうとすると「文面が思いつかない」「日付や宛名の書き方で迷う」――そんなときは、話し言葉で入力するだけでたたき台ができる無料ツール**「退職届・退職願メーカー」**を使ってみてください。

「◯月末で退職したい、宛先は株式会社△△の代表取締役◯◯様」――こんなふうに普段のことばで入力するだけで、必要な項目の入った書面のたたき台ができあがります。無料・登録不要でお使いいただけます。

完成した書面は、内容を確認したうえで、上司や人事に提出してください。撤回できるかどうかは提出後の状況で変わることもあるので、出す前に「本当に今の意思で確定していいか」を一度立ち止まって考える時間もつくってみてください。

話し言葉で退職届を作ってみる → /taishoku 話し言葉で退職願を作ってみる → /taishoku

まずは1枚、作ってみることから始めてみましょう。