完済証明書の書き方|借用書の返済完了・住宅ローン完済後に使う無料テンプレート
「親から借りた学費を、ようやく最後まで返し終わった」「住宅ローンを35年かけて完済した」「車のローンが今月で終わる」――そんな節目のとき、意外と忘れられがちなのが完済証明書の存在です。返し終わったのだから、もう関係ない――そう思いがちですが、「借金がなくなった」ことを紙に残しておかないと、あとから思わぬトラブルが起きることがあります。
たとえば、貸主が「まだ返してもらっていない」と勘違いしてもう一度請求してしまったり、貸主が亡くなったあとに相続人から「借金が残っている」と言われてしまったり。住宅ローンを完済したのに、抵当権の登記が家に残ったまま――というのも、実はよくある話です。
この記事では、法律にくわしくない方に向けて、完済証明書に書くべき項目、借用書との関係、住宅ローン完済時の使い方、印紙の要不要までを、順を追ってやさしく解説します。読み終わるころには、自分で一枚つくれるようになっているはずです。
完済証明書とは?「領収書」との違い
完済証明書とは、お金を貸した人(貸主)が、お金を借りた人(借主)に対して、「あなたの借金は全額返済されました。もう債務は残っていません」と証明する書面です。日本語で「かんさいしょうめいしょ」と読みます。
似た書類に「領収書」がありますが、役割は少し違います。領収書は「今回いくら受け取りました」という一回ごとの受け取りの記録。完済証明書は「これで全額の返済が終わりました」という債務がゼロになったことの証明です。
| 種類 | 発行するタイミング | 意味 |
|---|---|---|
| 領収書 | 返済のたびに毎回 | この回にいくら受け取った |
| 完済証明書 | 全額返済が終わったとき | 借金がゼロになった |
分割で返す借金の場合、毎月の返済ごとに領収書をもらい、最後の返済が終わったタイミングで完済証明書を発行してもらう――というのが理想的な流れです。
なお、民法上、弁済(返済)をした人は、貸主に対して受取証書(領収書)の交付を求めることができ、これは弁済と引き換えに請求できるとされています(民法486条・2026年7月時点)。完済証明書は法律上の義務として明記された書面ではありませんが、実務では「最後の受取証書+債務消滅の確認」を兼ねる大切な書類として広く使われています。
完済証明書に必ず入れたい6つの項目
完済証明書に決まった様式はありませんが、次の6項目を押さえておくと安心です。
1. タイトル
「完済証明書」または「債務完済証明書」と冒頭に書きます。「借入金完済のご証明」といった書き方でもかまいません。何の書類か一目で分かるようにするためです。
2. 借主の氏名
「〇〇 殿」と、借主のフルネームを書きます。宛名を書くのは、この証明書があくまで借主に向けて発行するものだからです。
3. もともとの借入内容
「令和◯年◯月◯日付借用書に基づく金◯◯円の債務」のように、いつの・いくらの借金だったのかを特定します。もととなった借用書や金銭消費貸借契約書の日付を書いておくと、あとから見返したときに何の借金の完済証明かがはっきりします。
4. 完済した事実
「上記債務について、本日、全額の返済を受けたことを証明します」と書きます。ポイントは「全額」と明示すること。一部でも残っていると、あとで「あれは残債の一部だけだった」と言われかねません。
5. 完済日
最後の返済を受けた日を書きます。銀行振込で受け取った場合は、その入金日を書いておくと、通帳の記録とも一致して客観的な裏づけになります。
6. 貸主の署名・押印
本文の最後に、作成日・貸主の住所・氏名を書き、押印します。署名部分は自筆にするのが基本です。認印でも法的効力はありますが、金額が大きい場合は実印を使うと安心です。
【実例】親から借りた300万円を完済したケース
たとえば「親から住宅資金として300万円を借り、5年かけて返し終わった」という場合。完済証明書は次のようなイメージになります。
完済証明書
山田 太郎 殿
令和2年4月1日付借用書に基づく金三百万円(¥3,000,000-)の債務について、本日、全額の返済を受けたことを証明します。
令和7年3月31日
東京都◯◯区◯◯町1-2-3 山田 花子 ㊞
これを貸主(お母さん)から借主(息子さん)に渡します。原本は借主が保管し、貸主も念のためコピーを一部持っておく、というのが安心です。
借用書の返還と完済証明書の関係
「完済したら借用書はどうなるの?」というのは、よく聞かれる質問です。
民法487条には、「弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その債権に関する証書の返還を請求することができる」と定められています。つまり、借主は貸主に対して、借用書の返還を求める権利があるということです。
ただし、実務ではこんな悩みもよくあります。
- 貸主が借用書をなくしてしまった
- 借主が「借用書の原本と、完済証明書の両方が欲しい」と言われた
- 郵送でやり取りしていて、原本の返還が面倒
こんなときに便利なのが完済証明書です。借用書を目の前で破棄する・返還するかわりに、「この借用書に基づく債務は完済されました」と書いた完済証明書を渡すことで、実質的に同じ効果が得られます。
理想は「借用書の原本を借主に返す+完済証明書も渡す」の両方ですが、少なくとも完済証明書だけは受け取っておくと、あとから「まだ返してもらっていない」と言われるリスクを大きく減らせます。
なお、受取証書(領収書)の交付は弁済と同時履行の関係にあるのに対し、借用書などの債権証書の返還は、弁済のほうが先――というのが判例・通説の考え方です。「返してくれるまで最後の返済はしない」とは言えない点だけ、頭に入れておくとよいでしょう。
住宅ローンを完済したとき:抵当権抹消手続きとセット
完済証明書がとくに重要になるのが、住宅ローンを完済したときです。
住宅ローンを借りると、通常は自宅(土地と建物)に金融機関の抵当権が設定されます。これは「もし返せなかったら、この家を売って回収させてください」という担保の登記です。ローンを完済したからといって、この抵当権の登記は自動では消えません。自分で法務局に「抵当権抹消登記」を申請しないと、登記簿上は抵当権が残ったままになります。
抵当権が残ったままだと、家を売るときや、リフォームローンを新しく組むときに手続きが止まってしまい、いざというときに困ります。
完済後、金融機関から届く書類
住宅ローンを完済すると、銀行や住宅金融支援機構などから、次のような書類が送られてきます。
- 抵当権解除証書(登記原因証明情報)
- 抵当権設定契約証書
- 抵当権抹消についての委任状
- 登記識別情報通知(または登記済証)
- 完済証明書(金融機関によっては別名の場合あり)
これらをまとめて、不動産の所在地を管轄する法務局に提出することで、抵当権抹消の登記申請を行います。法務局のご案内でも、「必要な書類を金融機関等から受け取られた際には、紛失・汚損等しないようにして、できるだけ速やかに登記申請を」とされています。
抵当権抹消登記にかかる費用
自分で申請する場合、登録免許税は不動産1個につき1,000円(2026年7月時点)。一戸建てなら土地と建物で合計2,000円、マンションなら建物のみで1,000円が目安です。司法書士に依頼すると、これに加えて手数料(相場は1万5,000円前後)がかかります。
金融機関が発行する完済証明書は、この抵当権抹消手続きで直接使うわけではありませんが、「たしかにローンは完済されている」という事実を裏づける大切な書類なので、他の書類と一緒に大切に保管しておきましょう。
なお、個人間の借金と違い、住宅ローンの完済証明書は金融機関が発行するので、自分で作る必要はありません。この記事の書き方は、あくまで個人間の貸し借りや、事業者間で自作するケースを想定しています。
収入印紙は必要?完済証明書と印紙税
「借用書には印紙が必要だったけど、完済証明書はどうなの?」という疑問もよく聞かれます。
結論から言うと、完済証明書には基本的に収入印紙は不要です。
印紙税がかかるのは、印紙税法の別表第一(課税物件表)に定められた20種類の課税文書だけです(2026年7月時点)。文書に印紙税がかかるかどうかは、書類のタイトルではなく中身の実質的な意味で判断されます(国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」)。
完済証明書は、単に「借金がなくなった事実」を証明するだけの書面で、金銭を受け取る売上代金の受取書(17号文書)にも、契約書(1号・2号文書)にも該当しないのが一般的です。
ただし、注意が必要なのは**「最後の返済分の領収書」を兼ねているケース**。たとえば「本日、最終回の返済金〇円を受領し、これをもって完済したことを証明する」といった書き方をすると、金銭の受取書として印紙税の対象になる可能性があります(受取金額5万円未満なら非課税)。
心配な場合は、「完済証明書」と「最終回の領収書」は分けて発行するのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 完済証明書は必ず発行しなければいけない?
法律上、明確な発行義務があるのは領収書(民法486条の受取証書)までで、完済証明書は法律で決まった書面ではありません。ただし、あとから「まだ返してもらっていない」と言われるリスクを避けるために、実務では発行するのが強くおすすめされています。
Q. 手書きとパソコン作成、どちらがいい?
どちらでも法的効力は同じです。ただし、貸主の署名部分だけは自筆にしておくと、筆跡が証拠になり安心です。パソコンで作成した本文に自筆でサインする形が、読みやすさと証拠力のバランスがよくおすすめです。
Q. 印鑑はシャチハタでもいい?
避けたほうが無難です。認印か実印を使いましょう。金額が大きい場合は実印+印鑑証明を添えるとより確実です。
Q. 借用書と完済証明書、両方保管したほうがいい?
理想は「借用書の原本は借主に返還し、完済証明書を新たに発行する」ですが、両方保管するのもかまいません。少なくとも借主は、完済証明書は原本を大切に保管してください。
Q. 車のローンを完済したときも完済証明書は必要?
自動車ローンの場合、所有権留保(ローン完済まで名義がディーラーやローン会社になっている)が付いていることが多く、完済後には所有権解除の手続きが必要です。ローン会社から完済証明書と一緒に「所有権解除に必要な書類(印鑑証明書・譲渡証明書・委任状など)」が送られてくるので、それらをそろえて陸運局で名義変更をしましょう。
Q. 借用書を紛失していても完済証明書は作れる?
作れます。「令和◯年頃に貸し付けた金◯◯円の債務」といった書き方で、当事者間で内容がわかっていれば有効です。ただし、金額や日付があいまいだとトラブルの元になりやすいので、通帳の記録などをもとにできるだけ具体的に書きましょう。
Q. どうしても書き方が分からない場合は?
金額が大きい、当事者の一方が亡くなっている、相続がからむ、事業性の債務など、条件が複雑なときは司法書士や弁護士に相談すると安心です。地域の法テラスでは無料相談も受け付けています。
まとめ:完済証明書は「借金の卒業証書」
完済証明書は、貸し借りの終わりを気持ちよく迎えるための、やさしい仕組みでもあります。「疑うから書く」ではなく、「けじめとして残しておく」――そう考えると、貸主も借主もお互い気持ちよく区切りをつけられます。
- 必要な6項目を漏れなく書く
- 「全額」の返済を受けたことを明記する
- もとの借用書の日付・金額を特定する
- 貸主の署名は自筆で、押印もセットで
- 住宅ローンなら抵当権抹消登記までワンセットで
- 印紙は基本的に不要(領収書兼用にしないのが安全)
このあたりを押さえておけば、初めての完済証明書でも安心して作れます。
記事の参考にした情報源
この記事は、以下の公式情報源を確認して執筆しています(2026年7月時点)。 制度・税制は改正されることがあるので、実際に書類を作る前に、 下記のリンク先で最新情報をご確認ください。
[受取証書と債権証書返還請求権] e-Gov 法令検索「民法」(第486条・受取証書、第487条)
[抵当権抹消登記の実務] 法務省「不動産登記のオンライン申請」
[完済証明書は課税文書に該当しないこと] 国税庁「印紙税額の一覧表」
民間実務の相場・慣行に関する部分は、複数の実務記事・専門家サイトを参照しつつ、当サービスで加筆修正しています。
話し言葉で完済証明書を作ってみる
とはいえ、いざ書こうとすると「文言が思いつかない」「順番がわからない」と手が止まりがち。そんなときは、話し言葉で入力するだけでたたき台ができる無料ツール**「書類メーカー」**を使ってみてください。
「令和2年4月に貸した300万円を、今日全額返してもらった。母から息子へ」――こんなふうに普段のことばで入力するだけで、AI(Claude Opus)が必要な項目の入った完済証明書のたたき台を作成します。無料・登録不要でお使いいただけます。
完成した書面は、内容を確認したうえで、貸主のご署名・押印を添えて借主にお渡しください。住宅ローンなど金額が大きい場合や、抵当権抹消手続きが絡む場合は、司法書士に一度目を通してもらうとより安心です。
話し言葉で完済証明書を作ってみる → /kansai
まずは1枚、作ってみることから始めてみましょう。